b09020「なぜ世界は不況に陥ったのか」 世界不況の構造を解き明かしたテキスト ☆☆☆
なぜ世界は不況に陥ったのか 集中講義・金融危機と経済学
なぜ世界は不況に陥ったのか 集中講義・金融危機と経済学
池尾 和人,池田 信夫


大学院の友人たちと自主ゼミ的に経済学の基礎を学ぶために読むことにした本。
本の主旨は経済学の基礎を説明するテキストではなく、本のタイトルどおり今回の世界不況の構造について説明しているテキストであった。

不況の一番の原因は、アメリカ経済の成長に対するアメリカ国内外の人々の過信が、市場経済に歪を起こしてしまい、そのバブル的なものの信用が崩れてしまったことによるようだ。

<<一九九七年のアジア金融危機以降、東アジア諸国も外貨準備に対する予備的需要を高め、経常収支の黒字を出すようになります。その結果、世界のほとんどの国が経常収支黒字で、赤字なのはアメリカだけだという状況になり、グローバルインバランス(国際的な経常収支の不均衡)が急激に拡大するに至りました。>>p.10

また、ここに一九八五年以降、アメリカはスタグフレーション(インフレ&景気の低迷)を脱却して、二十年間もグレートモデレーション(大平穏期)が続き、
<<人々のリスクに対する感度は鈍くなり、高をくくるようになった>>ところが背景にあったようだ。

さらには、金融ビジネスを再活性化させた投資銀行が成功して、肥大化するとともに、新たなビジネスモデルとしてヘッジファンド化して、高いレバレッジを追求したことも一因となっていた。

さらにはアメリカ政府のアメリカンドリームのための住宅政策がサブプライムローン問題を助長したことも一因となっている。


この金融危機に対応するために、アダムスミス以来の市場重視の古典派的な議論を踏まえた上で、一昔前的な(市場を政府がコントロールするという)ケインズ的な要素を組み入れたモデルが統一的なフレームワークとして受け入れられているそうです。
つまり、量的緩和とリスク資産の購入ということなるようです。だけど、インフレ・ターゲット政策はそれを支持していたクルーグマンも否定して政策化されることはないようです。

今後、グローバルインバランスが解消されていくと、アメリカの赤字が減り、日本の黒字(米債)を減らすことになると、円高が続くことになり、製造業の北米市場輸出での経済成長は日本にとって難しくなっていきます。

そのため、新たな産業を生み出していく必要があり、そのためには起業が必要となり、雇用を流動化させて成長産業に人を動かしていく必要があるそうです。
(従来の公共投資は生産性の低い土建にお金を放出するので、この逆の方向になります。つまり、道路や空港を国のお金で作る時代は早く終わらせないといけないということになります。)


アメリカの成長への世界中の妄想がアメリカを実体経済以上に肥大化させてしまったというのは、宮崎駿の「千と千尋の神隠し」に出てきた欲望で膨らんでいき凶暴になっていくカオナシを思い起こさせます。

この対談の中で、二人は市場経済を否定していません。むしろ、市場経済を健全化させる施策(情報の非対称化といった問題に対応するための「情報インフラの再構築」、投資銀行?が暴走するような「エージェンシー問題のコントロール」)が必要だとしています。
日本の現在のバラマキ政策は、経済学では既に相手にされていないケインズのやり方で対症療法的にやっていけば、原因も解決できるだろうという時代錯誤的なものであり、政策担当者(官僚、政治家)は新しい経済理論を学ぶべきであり、そのためにこの本を書いたようだ。
| 読書(経済学)| 23:29 | comments(0) | trackbacks(0) |
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