b10024「東京奇譚集」(再読) 無条件の愛がすべてを変える力をもつこと ☆☆☆
村上さんの短編だが、前回読んだ時、非常に面白く感じたので再読してみました。

前回は、ハワイのサーフィン中にサメに襲われて一人息子を失った母親のいくぶんハードボイルドな話が気にいったが、今回は小説家と職業のわからない女性との関係を描いた「日々移動する腎臓のかたちをした石」が印象深かった。

女医が拾った腎臓のかたちをした石が机においておくと、常に位置を変えるようになり、女医を揺さぶり続けるという内容の小説。
小説家は、その石の動きが何を意味しているのか、自分で書いていて、意味を理解することができない。それは恐らくは、小説家自身が誰かを無条件に愛することのできない迷いをあらわしていることを彼は察知できない。

彼はいったん心を決めて、小説内において、女医に石を捨てさせる。つまり、迷いを断ち切って、一人の女性を愛そうとする。
だけど、彼が生涯愛する女性はたった一人と彼の中で決め切れていない逡巡さがある。
だから、石は深い海に沈んだはずなのに、小説内において石は再び戻ってくる。
そして、小説家はほんとうは愛したかったはずの女性との乖離を経験する。

だけど、彼はある日、悟る。その動く石のような、常に留保をつけたような、自分の煮え切れない愛の作法ではいけないのだということを。
無条件に誰か一人を愛するという心・決心こそが、彼を前に進ませることを。

短編「ファミリー・アフェア」で、家庭という束縛を嫌って、自由を謳歌しているのに迷いをもっていた主人公の男性がいたけれど、今、その無責任な自由というものを突破できるのが、無条件の愛というものなんだと悟ったわけなんだね。

・・・というのが僕の感じたこと。

| 日々の泡| 20:21 | comments(2) | trackbacks(0) |
Comment
<パキラさん、こんばんは。調子はどうですか?
 いつも時差コメントばかりですみません^^

「東京奇憚集」CALの中でも、村上氏の作品の中で好きランキングのかなり上位にある本ですね。

 この本にはDog ear(←この言い方、実はパキラさんに習いました)がとても多くつけられています。

 この小説の中でCALが大好きな言葉は「職業というのは本来は愛の行為であるべきなんだ。便宜的な結婚みたいなものじゃなくて」という部分です。
愛の行為。。キリエさんじゃないけどとても深く感心しました。村上さんの小説には本当に印象深い素敵なセリフがたくさんありますよね。

 日常の中でふと起こる示唆のようなできごとを見逃さないように、普段なかなか忙しいながらも注意深い心持ちでありたいと思ったり。

 残暑まだまだ続きますがお体気をつけて下さいね。それでは、また〜。   ☆CAL☆
Posted by: CAL |at: 2010/08/30 12:06 AM


愛の行為とは、ほんとうにいい表現ですが、なかなか愛情を注ぐには疲れてしまっている人が多いようにも思いますね。
そして、キリエさんの職業はなるほどと思わせるものでしたね。

なるほど、愛の行為が理解できたとき、彼にとっての職業の意味がはっきり浮かび上がったということなのかな。

ぼくも、日々に鈍感にならないようにしたいなと思います。
ヒートアイランドのおかげで暑い日続きますが、CALさんもお体大切に。
Posted by: パキラ☆ |at: 2010/08/30 11:25 PM










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