「麦ふみクーツェ」 現実から遊離しても自分らしさを求めれば、人生には喜劇と悲劇が交錯する
いしいしんじの「麦ふみクーツェ」

いしいさんの小説を読むのは始めてだが、児童文学のように平仮名が多いのが特徴で、その分、物語の叙述に力が入っているのだと思う。
始め読んでいて、ガルシア・マルケスのような南米文学のようなストーリーなのかなとも思ったが、南米文学ほどは土や草や血の匂いを感じない。
それでも身体や行動が一般から見て奇異に見られるものをとことん追及してみせる。目立つものほど現実的に生きていくことが選択できず、自分らしさを求めなければいけない。その結果、人生の喜怒哀楽を感じることが多いものだ、という設定がそこにあるからだ。
ストーリーの底辺には哀しみが流れているが、その哀しみも見えなくなった過去において強烈な喜びを味わったから生じる哀しみであり、それは人生において必然である、というメッセージも投げかける。
今の自分を肯定すればきっと道は拓かれる、そんな気にさせてくれる小説だと思います。

ただ、個人的には、この小説世界があまりに現実から離れた世界を描いていて、リアルワールドの縁にもひっかからないので、桟橋から沖合いを進む汽船を眺めているような茫洋な気分になったのも確か。まぁ人生というのはトータルに見ていけば、そんな茫洋なものには違いないけど・・・。

麦ふみクーツェ
麦ふみクーツェ
いしい しんじ
| 読書(小説)| 11:54 | comments(0) | - |
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